昭和の理容技術が息づく、本物のクラシックスタイルを求める男たちの聖地 BLUE VELVET’S

BLUE VELVET'S


店舗名

BLUE VELVET'S


昭和の床屋の技術に徹底的にこだわり、本物のクラシックスタイルを追求し続ける理容師・垣野内 秀樹さん。アメリカン・グラフィティに魅せられ、世界の理髪師TOP6に選ばれたこともある垣野内さんの理容師としての哲学や技術への想いを伺った。


アメリカン・グラフィティから始まった憧れの世界

「中学3年の時に見たアメリカン・グラフィティという映画が、すべてのきっかけでした」
垣野内さんの理容師人生は、一本の映画から始まった。その映画に描かれた夢のような青春の世界、ファッション、ヘアスタイル、音楽すべてに魅せられ、いつしかそれが自分の人生の方向性を決めることになった。
さらに大きな転機となったのは、シャネルズの田代まさし氏との出会いだった。「シャネルズというグループがいて、田代さんと出会って、それからドゥーワップとかリズム&ブルースの音楽がすごく好きになりました」と当時を振り返る。
「アパレルの展示会をやってた時に、田代さんが来てくれて」
偶然の出会いから始まった田代氏との交流は、その後の垣野内さんの人生に大きな影響を与えた。有名テレビ番組などで、垣野内さんが手がけた衣装を着用してもらうなど、深い協力関係が築かれた。紆余曲折を経て、3年前に渋谷のイベントで再会し、現在も交流が続いているという。

「BLUE VELVET'S」に込めた想い

店名「BLUE VELVET'S」の由来には、実に興味深いエピソードが隠されている。
「ちょっと恥ずかしい話なんですけど」と前置きしながら垣野内さんが語ってくれたのは、まず前身となる「パラダイス」というお店の成功物語だった。
「ここのお店の前にパラダイスというお店を名付けしてくれた友達がいて、そいつがアメリカに住んでいるときに、学校に行く途中にパラダイスネクタイというフラミンゴの柄のネクタイの会社があったらしいんですよ。」
その友人からの提案で名付けられた「パラダイス」は、「楽園っていう意味だし。」という単純な理由からスタートしたにも関わらず、大ヒット店となった。
「2年半で1200人の顧客をつかんだお店だった」という驚異的な成功を収めたのだ。

独立への道のりと新たな店名への想い

パラダイスの時は雇われの店長だったんですけど、独立して新しいお店をやるときにそいつにまた連絡して、何かいい名前ないと言ったら、BLUE VELVET'Sがいいんじゃないっていう話になって」
パラダイスでの成功を経て独立を決意した垣野内さんは、再び同じ友人に店名の相談を持ちかけた。そこで提案されたのが「BLUE VELVET'S」だった。
「映画でもあるし音楽の曲でもあるし、スラングとしても面白い意味を持つ言葉なので」
この名前には、映画や音楽の世界に根ざした文化的背景と、同時にスラングとしての特別な意味が込められていた。

昭和の床屋技術への絶対的なこだわり

垣野内さんの技術論は明確だ。
「新しい技術というのが結構今出てきているんですけど、正直僕は1980年代に習った基本の理容理論、あれがベースになっていて、それ以外のことを正直覚える気がなかった」
多くの理容師が講習会に参加し新しい技術を学ぶ中、垣野内さんは敢えて昭和の床屋技術を貫いてきた。「本当に昭和の床屋の技術を求めてこられるんだったら、うちに来ると間違いないと思います」と自信を持って語る。

お客様一人ひとりに合わせたスタイル提案

「こだわりのポイントというのが意外となくて、お客さんに似合うスタイル、お客さんの骨格を見て、瞬時に判断して、ヘアスタイルを自分でチョイスできる」
技術への絶対的な自信は、お客様への真摯な向き合い方からも表れる。リーゼントだけでなく、様々なクラシックスタイルを、その人に最も似合う形で提案する。

お客様との向き合い方 - 技術で答える理容師

「ぶっちゃけコミュニケーション取らないですね」
一見冷たく聞こえるかもしれないが、垣野内さんの接客哲学は深い。
「お客さんが話をしに来てるんじゃなくて、ヘアスタイルを求めてきてるから、しゃべりより技術で答えてあげる」
この姿勢は、お客様一人ひとりを見抜く洞察力に基づいている。「この人はリラックスしに来てるなっていう時は、やっぱり話しかけられたら嫌ですよね。でもヘアスタイルだけはちゃんとしたい。」

本当のサービスとは何かを追求

垣野内さんが若い頃に体験した、散髪屋での苦い思い出が今の接客スタイルを形作っている。
「僕が昔散髪屋行ってた頃に、セットしてもらって、お店の中では崩さないんですけど、お店を出た瞬間、こんな頭しないだろってぐちゃぐちゃにしてた。それは嫌だなと思って」
お客様に「ベストな状態で帰っていただく」ことを目指し、表面的な会話よりも技術で満足してもらうことに徹している。

店舗空間への飽くなき探求心

「内装の色をすごく当時から変えてて、ここでもう5、6回目なんです。一番最初はピンクだった」
垣野内さんの店作りは実に興味深い。龍や虎の絵はそのまま残しながら、クリーム色、ブルー、グリーン、ミントグリーンと様々な色に変更を重ねてきた。現在の赤と黒の配色は20年以上継続しているという。
「お客さんに驚いてもらうっていうのがすごい好きだった」
かつては半年に1回のペースで塗り替えを行うほど、空間作りに対する情熱は並外れていた。4店舗を直営で展開していた時代は、さらに頻繁に各店舗の雰囲気を変えていたという。


最後に今後チャレンジしてみたいことや次世代へのメッセージを伺った。


Q.若手理容師へのメッセージ

A.今海外の理美容師さんたちがすごく日本の技術っていうのに着目してくれている。ただ、人気アニメの暴走族のスタイルがかっこいいみたいな流れになっていて、ちょっと勘違いはしてると思うんですけど、本当のクラシックっていうのはそういうんじゃなくて、もっとイギリスとかの流れがあるような、あくまで紳士的なかっこいい、いわゆる紳士な不良っていうスタイルがまた主流になる時代がまた来ると思う。
今から学ぼうとしてる日本の理美容師さんで、僕でよければ全然教えますんで。わからないことは聞くっていうのが一番の近道、技術の向上にはつながると思います。

Q.今後挑戦したいこと

日々挑戦。ライフ・イズ・ギャンブルが座右の銘なんで、勝つか負けるか落ちるか登るかどっちかの人生。
ただ基本にあるのは、人に迷惑をかけない、自分のケツは自分で拭くというのがポリシーなのでもっと挑戦していきたいですね。

BLUE VELVET'S。 昭和の理容技術が息づき、本物のクラシックスタイルを求める男たちが集う場所。 映画と音楽に魅せられた一人の理容師が創り上げた、時代を超越した美の空間がここにある。 技術で語り、技術で応える。それが垣野内さんの、そして「BLUE VELVET'S」の揺るぎない信念なのだ。


店舗情報

BLUE VELVET'S

〒730-0052 広島県広島市中区千田町1丁目14-3